イネウサルカ

創作小説・イラスト+PSO2


  

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ひとつを貫くもの 第29話。

いろいろ詰め込んでいるのでまずはこちらの注意書きをご覧ください。

カズマの過去と自らが選択する未来の物語。
前回→第28話

先を見据えてフラグを立てていかねばと思いながら、そのフラグを忘れそうな自分がおります(^p^)

二次創作の物語なので、苦手な方は閲覧をお控え下さい。




「……カズマさんは今も変わらないまま、自分を責めているのかしら」
 問うように言った慈雨は笑みを崩さなかったが、心苦しそうであった。
 毎年顔を合わせる度に声を掛けようと思うのだが、カズマが纏う近づき難い空気がそれを阻んだ。互いに苦しい思いをするのであれば顔を合わせないようにしようと考えたが、何故か毎回鉢合わせてしまう。
 十一年の間カズマと言葉を交わした事がないため、彼が何を思っているのかは分からない。しかし、いつ見ても自身を責めているという事だけは分かる。
「……慈雨さんはカズマさんの事どう思ってるんですか?」
 子供達を守る事が出来なかった彼を、心の底では憎らしく思っているのではないか。彼女はそうでなくとも、カズマに掴みかかったという彼女の夫は憎しみを抱いているかもしれない。表情を曇らせるヤマトに対し、慈雨は微笑んだ。
「感謝してる。あんなにボロボロになってまで、子供達を守ろうとしてくれたもの。あの日、子供達だけで遊びに行かせなければ、あんな事にはならなかった。あの子達の側についていなかった私達の責任よ」
 カズマに恨みなどなく、感謝しかないと慈雨は答えた。あるのは親としての責任を果たせなかった事への後悔だ。それは彼女の夫も同じだという。
「影刻も……夫も、あの子達の側にいなかった事を後悔してるの。側にいれば守るだけの力はあったから。私達もアークスよ、今は休業してるけどね」
 ダーカーに対抗する力を持ちながら、我が子を守れなかった遣る瀬無さをカズマにぶつけてしまった。八つ当たりだ。
「あの人口より先に手が出るし、口も悪いのよねぇ。でもカズマさんに謝りたいって言ってるの。私達はカズマさんを悪く思ってなんていないわ」
 言葉に嘘偽りはないと、慈雨の口調と態度で分かる。ほっとした表情を見せるヤマトを目にして、慈雨も気持ちが伝わった事を嬉しく思った。自分の言葉を信じてくれた彼女になら頼めるだろう。
「ヤマトちゃん、カズマさんに伝えてくれる? 次にお会いした時はお茶でもしながらお話ししましょうって」
 互いにあの日の事を忘れる事はないが、もう互いに辛く苦しい思いを抱えるのは止めにしたい。
 彼女の気持ちを受け止め、必ずカズマに伝えるとヤマトは約束した。慈雨は嬉しそうに微笑み、椅子から腰を上げヤマトの横へ立つ。
「ありがとうヤマトちゃん。機会があればまたお茶しましょうね」
 礼を告げた慈雨はヤマトの頬へキスをする。驚くヤマトに対し、慈雨はウインクをしながら軽く手を振り立ち去った。
 呆然としたまま慈雨を見送ったヤマトは彼女の姿が見えなくなってから我に返り、自分も帰らなければと席を立つ。
「あれ? 伝票ない……」
 注文した飲み物の伝票がいつの間にかなくなっている事に気が付いた。驚いているうちに慈雨が悟られぬよう持って行ったのだろう。店員に声を掛けると、案の定支払いは慈雨が行なっていた。
 次に会った時には自分が彼女にご馳走しよう。出来ればカズマも連れて。そう思いながら、サクヤとの約束の時間が迫っている事に気付き、ヤマトは家路を急いだ。



第30話→そのうち。

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