イネウサルカ

創作小説・イラスト+PSO2


  

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ひとつを貫くもの 第20話。

いろいろ詰め込んでいるのでまずはこちらの注意書きをご覧ください。

カズマの過去と自らが選択する未来の物語。
前回→第19話

しばらく更新出来ない間にEP4が終わってEP5が始まってしまいましたわい。

二次創作の物語なので、苦手な方は閲覧をお控え下さい。




 テーブルを挟み向かい合って座るヴィンツィエロと春望の間には険悪な雰囲気が漂っていた。カズマに関して本当の事を話して欲しい春望に対して、ヴィンツィエロはシャオとの約束通り知らぬ存ぜぬを貫いている。春望の気持ちは十二分に分かる。しかし、教える訳にもいかず抱え込み、苛立ちが募る。春望は春望でカズマの状況が気になるのに何も教えてもらえず、信頼している兄に嘘をつかれているのでは、という疑いを抱く事で苛立ち、我慢の限界だった。
「……ヴィンにーちゃん」
「もー勘弁してくれよ。今日は何でそんなにしつこいんだよもっちは」
 何度問われても答えられる答えがないのだから、と、ヴィンツィエロはほとほと困り果てた顔で春望を見る。春望は真剣な顔をして、少し俯いた。
「とーちゃん、もう帰ってこないの?」
 諦めの色が滲む春望の顔を見た瞬間、ヴィンツィエロは勢い良く立ち上がった。
「帰って来るに決まってんだろ! いい加減にしろよハル!」
 荒げる声とテーブルを叩く音に驚き、春望はビクリと体を震わせてから顔を上げた。泣きそうな春望の顔を見てヴィンツィエロはハッとし、大人気ない事をしてしまったと気付く。
 互いに何も言えず見つめ合った状態のまま動けないでいると、玄関が開く音と共に慌てた声が飛び込んできた。
「ヴィンちゃん、もっちゃんどうしたの!? ケンカはダメだよ!」
 ヴィンツィエロと春望の間に入ったのはサクヤだった。帰宅したところでヴィンツィエロの怒鳴り声が聞こえ、慌てて中に入ったのだ。その声は別室にいたレニにも届いたらしく、彼も姿を見せる。
 日頃春望からヴィンツィエロがカズマに関して質問攻めに遭っているのを見ているため、レニは今日もそれが原因であろうと察したらしく、春望を宥め始めた。
「ハル、そんなにヴィンばかり問い詰めてはいけないよ。話せる時が来たら必ず教えてくれるってイヅナさんが言ってたでしょ?」
 ヴィンツィエロよりも事情を知っているであろうイヅナが、必ず話す、もう少し辛抱してくれと皆に言い、春望もそれで納得していたはずだ。イヅナに詰め寄らないのは約束をした事と、それをしてものらりくらりとかわされるだけだと分かっているからか。
 春望は涙を溜めた目でレニを見上げた。その眼差しは訴えかけるようであった。
「……にーちゃんもねーちゃんも、とーちゃんの事心配じゃないの? オレとーちゃんに会いたいよ……」
 皆何事もなかったかのように振舞っているのが春望には解せなかった。カズマがいないのが当たり前のように過ぎていく日々が怖いのだ。ヴィンツィエロが怒ったのを見れば、カズマの身を案じながらも彼が戻ると信じているのだと分かる。もちろんそれはヴィンツィエロだけでなく、レニもサクヤも同じ気持ちでいるのだと分かってはいるのだ。しかし、カズマの事に関して何も教えてもらえないのは不安で、怖い。
 いよいよ俯いて泣き出してしまった春望に対し、レニが身を屈めて彼の頭を撫でる。
 レニとサクヤに慰められる春望を見つめていたヴィンツィエロは、他にも人の姿がある事に気付いた。いつも気に掛けて様子を見に来てくれているヤマトとミネだ。
「ミネさんとヤマト……ごめん、今ちょっと……」
 普段なら和やかに客人を迎え入れるところだが、今はそれが出来る状態ではない。少し時間を置くか日を改めて貰おうと申し訳なさそうに声を掛けるヴィンツィエロへ、大事な用があって来たのだと二人は告げた。
「シャオ君がね、カズマさんの家族には話してもいいって」
 ヤマトの言葉にヴィンツィエロは目をぱちくりとさせたが、もう皆に隠さずとも良いのだと理解するとホッとしたような、心苦しいような複雑な表情を浮かべた。もう知らないフリをせずに済むのは良いが、皆の気持ちを考えると辛い告白になる。その心情を察し、ミネがヴィンツィエロの肩に手を添えた。
「今いるのはここにいる皆だけかな? 僕から話してもいい?」
「ミネさんが? でも……」
「私も一緒に話すから、ね?」
 ここは任せて欲しいという口調でヤマトにやんわりと押され、ヴィンツィエロは二人が自分に対して気を遣ってくれているのだと気付いた。それに甘えてしまっても良いのだろうか。少しの間迷ってから、ヴィンツィエロは小さく頷いた。
「……うん、お願いするわ。ごめん、ちょっと外出てくる」
 頭を冷やしてくるとミネとヤマトに告げて、二人が首を縦に振るのを見てからヴィンツィエロは足早に家を出た。春望達には視線を向けていない、それは後ろめたさの表れだ。



次→第21話

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