イネウサルカ

創作小説・イラスト+PSO2


  

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ひとつを貫くもの 第19話。

いろいろ詰め込んでいるのでまずはこちらの注意書きをご覧ください。

カズマの過去と自らが選択する未来の物語。
前回→第18話

前回から間が空いてしまった…(´・ω・`)

二次創作の物語なので、苦手な方は閲覧をお控え下さい。




 一雨きそうな空を仰ぎながら、カズマは上着から取り出した煙草に火を点けた。
 今日も誰かがここへやってくる気がする。それは毎日来ると言っていたヤマトのように親しい者ではなく、恐らくは今回の件に関わる者だ。確証はないが、そんな予感がした。
 ゆっくり紫煙を吐き出しながら、静かな周囲へ耳を傾ける。誰かが近付いてくれば足音で分かる。が、それは音もなく現れた。背後に出現したその気配は何度か感じた事がある。カズマはゆっくりと振り返り、それと向き合った。
「……【仮面】か」
 カズマの前に度々姿を現し、マトイに関して忠告をしてきたダークファルス【仮面】。一度だけ目にした仮面の下の素顔は、カズマそのものだった。
 カズマは何も言わず、じっと仮面を見つめる。仮面も無言のまま、素顔を晒した。以前見た時と変わらず、鏡を見ているような気分になる程同じ顔。その【仮面】が、静かに口を開く。
「……私は、彼女を救えなかった貴様のなれの果て、だ」
 淡々とした口調で告げられたその言葉にカズマは驚いた。【仮面】はカズマの反応をよそに言葉を続ける。
「彼女を救うため、手を尽くし、時を渡り、それでもなお失敗し続けた」
 苦々しい【仮面】の表情。言葉と表情から、彼が何のために、何をしてきたのかカズマは知った。マトイが【深遠なる闇】にならぬよう様々な手段を用い、それでもマトイが変異する事を回避出来なければ時間を遡り、またやり直した。時間遡行。それが【仮面】の能力。
 何度失敗し、やり直したのだろう、希望の見えない顔をしている、と、カズマは感じる。
「如何に歴史を改変しようと、彼女が【深遠なる闇】に変異する結末だけは変わらなかった。彼女の世界を守りたいという願いを叶えるには、彼女を殺すしかない」
「だから俺に手を下せと言ったのか」
「そうだ。放っておけば彼女は【深遠なる闇】に成り果てる。だが、貴様にその意思はないのだろう?」
「ああ。守ると決めたんだ、諦める訳にはいかない。……お前も諦めきれないから、俺はこうなったんだろう?」
 確かめるようなカズマの問いに、【仮面】は眉根を寄せた。気付いているとは思わなかったのだろう。
「「……俺のこの力は何のためにあるのか、ずっと考えていた」
 ダーカー因子を吸収するだけで他に使えるものはなく、ただ溜め込むだけ。この力の意味に気付いたのは、ダークファルスが何を目的に行動しているのかを理解した時だった。ダークファルスの目的は【深遠なる闇】を復活させる事。そのために力を集めている。カズマのダークファルスとしての能力はそれに特化しているのだ。【深遠なる闇】を復活させるためだけに用意された器だ。
「【双子】をけしかけたのはお前だな?」
「……そうだ。賭けだった。【双子】が乗るとも限らず、貴様がその能力を得られる保証もなかった」
 マトイを救う事を諦めきれないからこその賭けだ。そして、カズマは【仮面】の望み通りの能力を得た。
「お前は……いや、俺は俺自身を利用したんだな」
 彼女を救うには殺す他ないと思いながらも、諦めきれぬ気持ちから用いた手段は、自らをダークファルスにし、そして彼女に代わって【深遠なる闇】になる事だった。他の誰を頼るでもなく、自らを使う辺りが何とも自分らしいとカズマは思いながら、【仮面】に向かって手を差し出した。
「少し寄越せ。吸収以外の使い方がよく分からん」
「……それで理解出来るのか」
「多分な。他のダークファルスでは出来るか分からんが、自分の力なら何とかなるだろう」
 勘で行動すらカズマにやや険しい顔をしながらも、【仮面】はカズマの手を取る。軽く触れた瞬間から力を奪われて行くのが分かった。全ての力を奪われてしまうのではないか、という不安を感じさせる能力だ。
 ますます表情が険しくなる【仮面】から、カズマが手を放す。吸収以外の力の使い方を理解したのか、納得をした顔をしていた。
 カズマが意識を集中させると、彼の体は黒いフォトンに包まれていく。
「……私を模倣するか」
 顔を覆い隠す仮面と、ダークファルスの証が印された黒衣。黒いフォトンの下から現れたカズマの姿は、【仮面】そのものだった。
「お前の姿でいる方が都合が良さそうだからな。悪いがお前の姿を借りるぞ」
 シャオが配慮してくれている中で、素顔を隠せる【仮面】の姿は勝手が良い。行動範囲を広げアークスと遭遇しても、正体がバレる事はほぼないだろう。
「……マトイを【深遠なる闇】にはさせない。救うぞ、俺達でな」
「……俺達で、か」
 自らを利用する事だけを考え、共に力を合わせようという考えには至らなかった。幾度となく同じ時間を繰り返すうちに、そんな気持ちも忘れていたようだ。
「……いいだろう。彼女を救えるのならば、何も惜しまん」
 協力を約束した【仮面】は黒いフォトンと共にこの場から姿を消した。必要があれば向こうから接触してくるだろう、そう思いながら顔を覆い隠す仮面だけを解いた。
 また懐から取り出した煙草に火を点け、大きく息をつくように紫煙を吐き出す。
「……シャオ、聞こえていたか?」
「ああ、ちゃんと聞こえていたよ。全部ね」
 シャオからの返事に、カズマはそうか、と一言呟くように口にした。何かがあると予感してから、シャオとの通信を繋いだままにしていたのだ。
「聞いてもらった通りだ。俺が俺でいられる間はアークスの敵になるつもりはないが……すまないがその後の事は頼む」
 シャオからの通信には応じ、【仮面】の姿でアークスと遭遇してもこちらから手を出すつもりもない。だが、【深遠なる闇】ともなれば自我など無に等しくなるだろう、自分一人で抑え込めるような相手ではない事は分かっている。頼れるのはダーカーに対抗出来るアークスだけだ、自分に出来る事はなさそうだとカズマは詫びた。
「……カズマ、君は本当にそれで良いのかい?」
「ああ。今の俺がマトイにしてやれる事はこれしかない。やると決めたんだ、やり切るさ」
 この状況でも、戻ってくるのを待ってくれる人達がいるのは知っている。それでも、もう一人の自分が賭けた願いに応え、マトイを救いたい。今ある彼女の笑顔がこれから先も続いていく事を望むのは自分も同じだ。
「シャオ、この話はお前の胸だけに留めておいてくれるか?」
 この事が知れれば、黙ってはいない者もいるだろう。やり遂げる為にも邪魔はされたくない。
「……分かったよ、口外はしないと約束する」
 何を言ってもカズマの決意は変わらないのだと悟ったシャオの約束する声は、いつもより少し暗かった。逆の立場だったならばと思えば、シャオの声音の理由もよく分かる。申し訳なく思うが、これで曲げられる程度の決意と覚悟ではない。
「シャオ、ありがとう。……それじゃあな」
 シャオからの返事を待たず、カズマは一方的に通信を切った。別れ際に「また」と言われると胸が痛む。申し訳なさと共に、後ろめたさのような気持ちもあった。
 短くなった煙草を消し、カズマは一度瞼を閉じ深呼吸をする。そうしてカズマの顔には揺るぎない決意が表れていた。固い意志を仮面で覆い隠し、カズマは黒いフォトンと共に何処かへと姿を消した。



第20話→そのうち。

| 物語(二次創作) | 20:00 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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